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「DX時代のイノベーションの科学」イベントレポート

2022年6月30日開催、180名以上の方にお申込いただいた大注目のウェビナー「DX時代のイノベーションの科学 ~ビジネスモデルから見るDX時代実現の方法~」では、『DXスタートアップ革命』監修の新規事業専門家・守屋実氏、『DXビジネスモデル』の著者・小野塚氏を迎え、DXを軸にしたイノベーションについて議論しました。

なぜ今DXなのか?DXに成功している企業の秘訣とは?本レポートでは、1時間超のイベントの様子を一部抜粋してお届けします。


講師紹介


<守屋実氏プロフィール>
1992年にミスミに入社後、新市場開発室で、新規事業の開発に従事。
2002年に新規事業の専門会社、エムアウトを、ミスミ創業オーナーの田口氏とともに創業、複数の事業の立上げおよび売却を実施。

2010年に守屋実事務所を設立。新規事業創出の専門家として活動。ラクスル、ケアプロの立上げに参画、副社長を歴任後、博報堂、ジーンクエスト(ユーグレナグループ)、サウンドファン、ブティックス、SEEDATA(博報堂グループ)、AuB、みらい創造機構、ミーミル(UZABASEグループ)、ファンディーノ、テックフィード、キャディ、フリーランス協会、JAXA、セルム、FVC、日本農業などの取締役、フェロー、理事など、 リクルートホールディングス、JR東日本スタートアップなどのアドバイザー、内閣府の有識者委員、山东省工业和信息化厅の人工智能高档顾问を歴任。
2018年4月にブティックスを、5月にラクスルを、2か月連続で上場に導く。

著者に「新しい一歩を踏み出そう! 」(ダイヤモンド社)「起業は意志が10割」(講談社)などがある。



<小野塚 征志氏プロフィール>
慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修了後、シンクタンク、システムインテグレーターを経て、欧州系戦略コンサルティングファームのローランド・ベルガーに参画。
長期ビジョンや経営計画の作成、新規事業の開発、成長戦略やアライアンス戦略の策定、構造改革の推進などを通じてビジネスモデルの革新を支援。

内閣府「戦略的イノベーション創造プログラム スマート物流サービス 評価委員会」委員長、経済産業省「フィジカルインターネット実現会議」委員、経済産業省「Logitech分科会」常任委員、国土交通省「2020年代の総合物流施策大綱に関する検討会」構成員、経済同友会「先進技術による経営革新委員会 物流・生産分科会」ワーキンググループ委員、ソフトバンク 5Gコンソーシアム アドバイザーなどを歴任。

近著に『サプライウェブ-次世代の商流・物流プラットフォーム』(日経BP)、『ロジスティクス4.0-物流の創造的革新』(日本経済新聞出版社)など。



<田所 雅之プロフィール>
株式会社ユニコーンファーム 代表取締役社長
これまで日本と米国シリコンバレーで合計5社を起業してきたシリアルアントレプレナー。シリコンバレーのベンチャーキャピタルのベンチャーパートナーを務めた。現在は、株式会社ユニコーンファーム 代表取締役社長として国内外のスタートアップ数社の戦略アドバイザーやボードメンバーを務めながら、事業創造会社のブルーマリンパートナーズの取締役も務める。累計15万部以上を売り上げた「起業の科学」の著者である。



小野塚氏講演

DXは目的ではなく手段である



小野塚氏:まず最初に申し上げたいのは、デジタルトランスフォームすることは目的じゃないんですね。 儲かる会社になりたい、社会にもっと価値を発揮できる会社になりたい、あるいは社会をより良くしたいなど様々な目標があると思います。さらに世の中も変わっている中で、真新しいデジタル技術が出てきて、物を売るのではなく、どこでも自由に使ってもらえるという価値を提供していきましょうとなります。サービスとして提供するとなったら当然ビジネスモデルも変わります。それによって、一回きりではなく継続的にお金をもらえるようになりますし、お客さんとの関係も変わります。

繰り返しになりますが、あるべき姿を実現する手段がトランスフォーメーションであり、その上で何をビジネスモデルとして満たすべきかをぜひご理解いただきたいと思います。

もう一つご紹介したいのは、起業家として、あるいはデジタルトランスフォーメーションをリードする立場として、マインドや発想が極めて重要になるということです。例えば大企業の方は特に、従来型のマインドセットで「これを売りたい」というありものベースで考えてしまう方が多いと思います。しかし、「こんな価値を感じてもらいたい」「こういうことができたら世の中良くなるんじゃないか」という発想で、価値志向で考える必要があります。

加えて、短期的な経営判断ではなくて、すぐには儲からないという前提で長い目で見て戦略を立てていくことです。他方でアジャイルの推進も重要で、結局最初にやろうとしたことがそのままうまくいくことなんてほぼないので、とにかくトライをすることが重要です。

最後に、 「新しい会社を作りたいんだ」「社会をこういうふうに変えていきたいんだ」というような強い意志を持って進めることも重要です。(書籍で紹介している)80事例はどれもこの条件を満たした結果として、新しいビジネスを切り開いています。


DX時代は、産業構造の変化によって訪れた

田所:そもそもなぜデジタルトランスフォーメーションが起こったか。それは産業構造の変化なんです。産業構造には5つのフェーズがあると考えていて、まず売り手の時代にはサプライチェーンを持っている所が権力を持っていました。この時代は、様々なチャネルの中でいかに歩留まりを減らすかという観点で、閉じたネットワークの中で自動化を目指していました。

90年代にweb1.0が起きて、取引費用とプロダクトを作る費用が下がりました。それによってサプライサイドが偉かった時代から、デマンドサイド、つまり売れる前の企画やいかにして買っていただいた後にお客さんを満足させていくのかが大事になりました。

先程DXは手段であるというお話もありましたが、お客様が真ん中、つまりサブスクライバーが主体になっていく中で、顧客がものを買った瞬間はお客さんとの関係の始まりに過ぎず、サブスクライバーを囲んでいるのはUXなんだという観点が非常に大事になります。



更に2025年以降はパーパスとインパクトの時代になると思います。例えばUXを考えるときに皆さん「足し算」で考えがちなのですが、テスラは7割の機能をなくしています。さらにスマホにつなげる感じで、今どんな状態かということがアプリで全部モニタリングできますし、 スマホから空調を事前にオンにすることもできます。「テスラ乗りたくてもチャージステーションないでしょ」という方もいますが、まさにUXの発想で、どこにステーションがあってどこが空いているのかがすぐ分かります。

つまりデジタルによって取引コストと探索コスト、それからつなげるコストが圧倒的に下がって、UXが良くなったということなんですよね。

テスラの時価総額が去年89兆円に上がったのがシンボリックでしたが、出荷台数でいうとトヨタの方が20倍多いんですよね。でもPERを見ていると圧倒的に将来に対する期待値が違っています。一度テスラに乗ってしまったら、他への乗り換えはないんです。これがまさにUXで、テスラに慣れてしまうと基本的に人って変わらないんです。

つまりテスラが決定的に違うところは、まさにデジタルというのをツールにして、従来のバリューチェーンではなく、テスラでいうところの「バリュージャーニー」に軸をおいたところだと思います。


守屋氏講演

どのようなDX事例があるのか

守屋氏:去年7月に出版した「DXスタートアップ革命」で20事例、今年5月に小野塚さんが出版された「DXビジネスモデル」で80事例、併せて100事例あります。どちらの本も、事例を学ぶという勉強のためではなく、事業を立ち上げる実戦の手引書として使ってほしいと思っています。DXを学んでも理解してもDX事業は生まれません。当たり前ですが、実際に身を投じて挑戦しなければ事業は生めないのです。

そういった意味で、「DXスタートアップ革命」を出版してからおよそ1年のあいだに、僕自身が新たに参画した3つのDX事業をご紹介させていただきたいと思います。



Gihoは、国際物流DXに挑戦している会社です。
国際物流のほとんどは実は海運でして、特に工業製品を運搬する際にはコンテナに入れて、船に積み、運んでいます。この一連の流れは、それぞれの産業機械に合わせた木箱を見積るところから始まるのですが、Gihoは、これまで職人技に頼らざるを得なく2週間もかかっていた見積を仕組み化することで、わずか3秒に劇的に短縮しました。この機能を皮切りに、国際物流全体をDXしようと挑戦しています。

Sovaは、バックオフィス業務DXの会社です。
バックオフィス業務は7割ぐらいがルーチンワークなのですが、士業への依存度が高く、時間と費用がかかっていました。例えば本店移転の手続きの場合、各役所に提出する書類が全部で18種あり、しかも各自治体とその会社の定款の掛け合わせで、手続きが1024通りに膨れ上がっているのです。SoVaは、こういった手続きを筆頭にバックオフィス業務全体を仕組み化、自動化し、自力でやるよりも8割の工数を削減、士業に依頼するよりも7割の費用を削減しました。

ima-createは、Do with XR、つまり何かをするときにはXR(VRやARを含む疑似空間を創り出す画像処理技術)でやりましょうと言う会社です。
例えば、溶接工の匠の技を伝承しようとしたときに、真っ暗で手元もよく見えない中で「ここでぐっと押し込むんだ」と言われてもよくわかりません。そこで匠の動きをVRすることで、スピードや輝度を調整しながらいつでもどこでも何度でも確認できるようにし、さらに自分の動きを匠の動きに、リアルタイムに重ねあわせて差分が見えるようにし、技の習得効率の飛躍的な改善を実現しています。

これらの3事例は、あくまでも守屋が新たに参画した先の話しであり、世の中には100倍、200倍も、新たなDXビジネスが生まていると思います。ぜひ皆さんもこのような事例を参考に、どんどんチャレンジしていただければいいなと思います。


DXとデジタル化の違いは、コスト構造の違い



田所:改めてDXとデジタル化の違いについて話したいと思います。不動産仲介のデジタル化を推進しているレインズ社を例にとると、不動産業界のアナログな情報をCRMのようにまとめることで、間接費を下げることができ、結果として利益を上げることができます。一方で、airbnbは不動産の在庫の流動性を上げることで利益を上げることができます。

Gihoもまさに同じで、コンテナを最適化することによって、一回の輸送に対する売上を最大化することができます。

つまりDXとは、デジタル化で単に間接費を下げるだけではなくて、扱えるものを増やしていて儲ける点にあると思います。

守屋氏:ラクスルもやっていることは一緒でした。例えばA4のチラシを印刷するときは、それよりもずっと大きな紙にさまざまな印刷データを並べて、一度にいくつもの印刷物を刷ってしまい、それを断裁機で断裁することでA4のチラシが出来上がります。この「印刷データを効率よく上手に並べる作業」を面付というのですが、ただ実際には、印刷工場の営業が取ってきたいくつかの案件を、職人の手で面付けするので、大きな紙をきれいに埋めることができません。そのため無駄な紙が生じてしまいます。

一方でラクスルはネットを使って、全国から細かな案件を大量に集めてコンピュータが最適に面付けするので、無駄な紙を最小限に抑えることができます。さらに面付けスピードも人より格段に早いので、コスト構造を変えることができました。

田所:そうですね。例に挙げたようなアナログな業界では、DXの前にデジタル化することが重要だと思います。ラクスルでは、名刺印刷が得意な印刷会社やチラシ印刷が得意な会社をネットワーク化、つまりデジタルアセット化することで、発注者は1枚から印刷できるし、印刷会社にしても取引先が倒産するリスクを減らすことができる。このように自分たちの業務を一度定量化・数値化していくのが大事だと思います。


DXでサプライチェーンが「ウェブ化」していく



小野塚氏:デジタル化についての小話があります。トヨタはノックダウン方式で車を製造しており、様々な部品を運搬する必要があります。トヨタはデジタル化しているので、3DCADを使ってコンテナにうまくはめ込んで積載率を上げています。
一方でフォルクスワーゲンも3DCADを使っているのですが、物流会社に開発を委託し、他社にも提供することで開発費を下げています。ここが日本の会社と違うポイントで、本業以外のビジネスチャンスを見逃さないですよね。

田所:なるほど、いわゆる業界の縛りがありますよね。DXの先にはIX、つまりインダストリー・トランスフォーメーションがあると思います。例えばホンハイのようなEMSでやっていくほうが、産業全体としての効率が上がっていきますし、EV化が進むことで垂直統合型でやっていくことにあまり意味がなくなってきます。

小野塚氏:仰るとおりですね。自動車のEV化が進むことは、ものづくりが変わるということです。EV車は部品を集めてパソコンのように製造することができるので、サプライヤーのネットワークが崩壊します。これは売る方も同じで、家電を量販店やECで買うのと同じように、これから先は自動車を量販店で買う時代が来るかもしれない。

このように、調達から販売まで含めて、モノの流れがウェブ化していくのではないかと思います。これを支えるプラットフォームビジネスもできるでしょうし、企業も時代に合わせて変わっていかなきゃいけないですよね。


日本企業はDXを実現できるか



田所:そうですね。ただ企業がいきなり変わるかといったら、いわゆるイノベーションのジレンマで難しいと思います。イノベーションを実現するには、僕は「3階建て組織」と呼んでいるのですが、売上の柱である既存事業を大事にしながら、2階部分の新規事業でマーケットシェアを取りつつ、3階部分のイノベーションを探索していくことが重要だと思います。

これの根底にあるのは、DXでケイパビリティを増やしていくこと、小野塚さんが言っていたようなアジャイルでやっていく文化を作ること、そして経営者がそこにリソースを配分することが、今後重要なテーマになってきます。

小野塚氏:存在を破壊しかねないビジネスにどこまでチャレンジできるかがポイントになりますね。ソニーが自動車を作ってもプレステが売れなくなることがありませんが、トヨタにとってEV車はそういう存在ですよね。

成功事例をひとつご紹介すると、アメリカの輸送会社UPSは、世界中に3Dプリンタを置くことで、例えば試作品データをアメリカから送信して現地でプリントアウトすることで、輸送する必要がなくなり、コストやCO2削減ができます。

日本の企業がそういったことができないかというとそうではなくて、富士フィルムが新規事業に成功したり、JR九州が売上の半分を観光で儲けたり、成功している事例もあります。

web3.0が広がっているこの時代において、両利きの経営ができるかどうかは非常に重要になってくると思います。


違いを生むのは「進化への強い意志」

田所:例えばソニーでは新規事業を社長直轄にして、専任担当をおいていますよね。レポートラインをひとつに統一することで、退路を断ち覚悟を持って取り組むことができるんだと思います。

守屋氏:私が大企業でよく話す例え話があります。ガソリン車が電気自動車になるから参入チャンスがあるらしいと考えた病院で、医者と看護師が診療後の時間で2割の力で会社を設立したとして、トヨタは脅威に思うでしょうか?

つまり伝えたいのは、「あなたの新規事業は誰かの本業」ということです。医者と看護師が診療後に車を開発するという、極端でわかりやすい例で話しましたが、じつは、ちょっとわかりにくくなる、自社の社員だけで、門外漢のことを、本業よりも格段に少ない労力でやろうとしていませんか?と問いかけています。

田所:僕が「起業の科学」という本でPMFの概念を紹介したのですが、本質としてはProduct Current-Market FitではなくてProduct Future-Market Fitなんですね。現在の市場に最適化することは健全なように思えますが、いつか茹でガエルのようになってしまう。Past-MarketやCurrent-Marketで成功された方々が意思決定者にいる場合が多いので、いかにしてFuture-Marketに対応していくかが重要です。


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