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株式会社QTnet YOKAプロ部 濱崎享 様 伊波亮 様 https://www.qtnet.co.jp/ |
福岡県に本社を置く株式会社QTnetは、九州電力グループの電力系通信事業者であり、個人・自治体・企業向けに通信回線サービスやICTに関するソリューションを提供している。ローカル5Gやオープンイノベーションプログラム、DXへの取り組み、AI事業の推進など、先進的な取り組みが注目されている。
新規事業創出と組織変革を担う、YOKAプロ部
── はじめに、貴社の新規事業への取り組みを教えてください。
伊波:2019年4月、新規事業創出を目的とした部署「YOKAプロ部」を新設しました。社長直轄の組織のため意思決定が早いことが特徴です。「YOKAプロ部」の「YOKA」は「Yes!OK!Agree!」の頭文字と博多弁「よか(良い)」から。プロには、プロフェッショナル・プロジェクト・プロフィット・プロダクトなどの意味を込めています。
── 具体的にどのような活動をされているのでしょうか?
濱崎:大きく3つのグループに分かれており、役割もそれぞれ異なります。1つ目は「新規事業創発グループ」で、ゼロから新規事業を考えプロジェクトを検証することが役割です。
関連して、オープンイノベーションプログラム「TSUNAGU」の運営にも力を入れており、本プログラムに採択された企業に対してはPoC費用の支援を含め、当社のアセットを活用したサポートをしています。これまでにベンチャーキャピタル4社、スタートアップ10社に出資したほか、3社を子会社に迎えています。
2023年3月には「TSUNAGU AWARD」と称し、現地とオンラインを合わせて100名以上が参加するイベントも開催しました。福岡のテレビ局5社で放送、Webメディア36社に掲載されるなどPR効果もあり、「TSUNAGU」の世界観をより多くの方々に届けることができました。
── そのほかに、どのような活動があるのでしょうか?
伊波:2つ目は、事業化が決まったプロジェクトを推進する「新規事業躍進グループ」です。グループ企業3社の事業拡大なども担当しています。3つ目が「AI事業グループ」で、こちらはAIに特化した事業推進やサービス開発が主です。当社が開発した生成AIである「QT-GenAI」、生成AIを用いて多言語翻訳を瞬時にできる「AI翻訳ソリューション」の提供・ユースケースの拡大・推進を実施しています
濱崎:以上3つの活動が新規事業創出の取り組みですが、もう1つ、「YOKAプロ部」が中心となり展開している全社向けプロジェクト、QTnet Innovation Lab「MUSUBU」の運営も任されています。
こちらは「変革に挑戦する企業文化の醸成」をミッションとした取り組みで、社内に眠る新規事業アイデア、人財・能力の発掘、新たな収益の種を創出する仕組みをつくる狙いがあります。
具体的には6ヶ月間の教育プログラムを提供しており、新規事業に関心のある若手メンバーであれば部門を問わず参加が可能です。最初の3ヶ月間は新規事業関連のスキルを習得するためのインプットの期間、次の3ヶ月間は新規事業のアイデアを検討するアウトプット期間となっています。
新規事業に限らず、既存事業のバリューアップやコストダウンなど、事業上の価値に繋げるプランを最終的には社長にプレゼンテーションするなど、「人を創る」「文化を創る」「事業を創る」ことが目標のプログラムです。
業界の「Top of top」の雰囲気、オーラに期待感
── 今回は「YOKAプロ部」と「MUSUBU」の両方でワークショップを開催しました。講師に田所をご指名いただいた背景を教えてください。
濱崎:まず「MUSUBU」については、参加メンバーに新規事業に関する知識をインプットしてもらう目的でワークショップを開催しました。
一方の「YOKAプロ部」では、特に新規事業創発グループにおいて、プロトタイプ作成以降のプロセスに課題があると感じていました。ビジネスアイデアを考え仮説を立てたあと、ユーザーインタビューを実施してプロダクトを磨きあげるタイミングで壁にぶつかるメンバーが多かったんです。
そこで、スタートアップや新規事業の専門家である田所さんに講師をお願いできないだろうかと考え、ご依頼をさせていただきました。
── 田所のことは、もともとご存じだったのでしょうか?
濱崎:私が『「起業参謀」の戦略書』と『起業の科学』の読者でして、書籍に書かれていたメソッドの素晴らしさを実感していたので、ぜひお願いしたいと思いました。
「Top of top」の講師に依頼することで、講師が醸し出す特別な雰囲気やオーラなども参加者には体感してほしいと考えていたので、比較検討をすることもなく依頼をさせていただきました。
暗黙知の見える化で「再現性ある技術」へ昇華
── ワークショップの内容について教えてください。
伊波:「YOKAプロ部」の参加者は約20名で、中級者向けワークショップとして「モチベーショングラフ(虫の眼)」と「市場の魅力度(鳥の眼)」の2つをお願いしました。
「MUSUBU」のメンバーに展開したのは、初心者向けに調整した「インタビューの極意」と「モチベーショングラフ(虫の眼)」のワークショップです。こちらは約15名が参加しました。
── 参加者からはどのような感想がありましたか?
伊波:当日は私も参加していたので、当事者としての感想をお伝えしたいと思います。「YOKAプロ部」で実施したモチベーショングラフについてですが、目に見える形で顧客課題を捉えるための方法論を学ぶことができました。
これまで、デザインシンキングなど手法については学習していたので、顧客理解や顧客への共感が重要であることは理解していたつもりです。しかし、どのレベルで理解をして、共感したあとにどんなアクションをすれば良いのか。大切な部分が暗黙知になっていると感じ、もどかしく感じていました。
それを個人の感覚に委ねるのではなく、グラフとして可視化することで、具体的な課題解決のアイデアに繋げることができるようになったと感じています。ユーザーインタビューの際にも、頭の中にモチベーショングラフを浮かべながら質問できるようになりました。
「市場の魅力度(鳥の眼)」については、私がこれまで細かくセグメント分けをして市場を見れていなかったことに気づかされました。官公庁が公表する調査データなどをみて、漠然とビジネスチャンスの有無を判断していたのですが、今回のワークショップに参加することで
- 今後3~5年の市場成長の見立て
- 変化するテクノロジープラットフォームとの親和性
- 業界の不透明さ
など、さまざまな指標を用いて市場分析ができるようになったと思います。
── 「MUSUBU」に参加している若手メンバーからの感想はいかがでしょうか?
伊波:「事業やサービスをつくる上で、顧客の声を聞くことの大切さを知ることができた」という感想がもっとも多かったですね。新規事業の場合、どうしてもプロダクトアウトの思考に陥るケースが傾向として多いと思うんですね。自分がやりたいことを後押しするためのインタビュー、補強するための材料に使ってしまうというか。
そうではなく、自分なりに仮説は持ちつつも、ユーザーの声を「正」として受け止め、仮説を塗り替えていくような思考を得ることができたと皆さん感じていたようです。ワークショップでは、ダイソンやアマゾンの事例を参照しながら、顧客の声を活かしてビジネスモデルを組み立てる方法も学びましたので、今後の活動にも生きてくると考えています。
濱崎:今回の学びを、1度にすべて吸収するのは難しいと思っています。しかし、何度もユーザーインタビューに臨む中で、伊波をはじめとするメンターたちから都度アドバイスをもらうことで、着実にスキルを身につけられると思うんです。それによって、新規事業開発に必要な力を身につけてもらうことを今は想定しています。
体系化されたメソッドを活かし、新規事業の創出へ
── 今後、ユニコーンファームに期待することがあれば教えてください。
濱崎:若手メンバーに対して、ユニコーンファームのイノベーションパートナーとして参画されている、守屋実さんの研修をマインドセットの部分で導入したらどうかと検討しています。心技体でいえば、守屋さんに「心」、田所さんに「技」をお願いすることで、より効果的になるのではと思っているので、ぜひ相談させてください。
内容によっては「YOKAプロ部」や「MUSUBU」に閉じることなく、全社に向けて講義してもらうのも良さそうですよね。
── 貴社の展望もぜひお聞かせください。
濱崎:会社の未来を明るくするためには、若手がチャレンジできる環境、アクションを起こし続けるメンバーが増え続けることが重要だと考えています。既存事業の盤石な土台がある今だからこそ、新たな道を切り拓き、社会をより良くするような事業・サービスを生み出し続けることが大切です。少し青臭い表現ですが、インターネットのその先で世の中を変革していける会社にしていきたいなと思っています。
── 最後に、田所のワークショップを検討している企業に対してメッセージをいただけますでしょうか?
濱崎:新規事業のつくり方、進め方がわからないと悩む企業は、まだまだ多いと思っています。田所さんは著書の中で書かれていることを含め、多くの手法を体系化し、メソッドとしてお持ちです。
『「起業参謀」の戦略書』または『起業の科学』を読み、そこに書かれていることをまずは一つひとつ実行に移していく。その上で、どうしてもわからない箇所・深掘りしたい箇所を田所さんに聞くことで、新規事業開発がより前進すると思います。
私たちも今回のワークショップだけで、学んだことのすべてを体現できるようになったとは考えていません。今後も継続的に学習していきたいと思いますので、今後もどうぞよろしくお願いいたします。
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