講演・ワークショップ

DX研究の最前線を学ぶフォーラムにスピーカーとして登壇。次世代経営者の育成支援を共に

一橋ビジネススクール研究科国際企業戦略専攻 准教授
DXF(デジタル・トランスフォーメーション・フォーラム) スピーカー
藤川 佳則 様

一橋ビジネススクール国際企業戦略専攻
一橋ビジネススクール国際企業戦略専攻(以下、一橋ICS)は、英語で全ての授業を行う国立大学初の専門大学院として、一橋大学発祥の地、神田一ツ橋に2000年に開設されました。「2つの世界の融合(Best of Two Worlds)」をミッションとして掲げ、異なる文化・多様な学問領域・ビジネスに対する様々な考え方の間の架け橋となることを目指しています。

DXF(デジタル・トランスフォーメーション・フォーラム)
一橋ICSの教授陣や海外提携校の講師陣、ゲストスピーカーや参加者間の直接対話を通じて、DXに精通した次世代経営者の育成と、その実行において重要となる産業や企業の枠を超えたネットワークの構築を目指す、2018年開講の短期集中型プログラムです。

講演の様子

講演依頼の背景について

━2018年、DXFのスピーカーとして登壇の機会をいただきました。ご依頼の背景を教えていただけますか?

田所さんが『起業の科学』を出版される少し前、都内のスタートアップイベントでお会いしたことがありました。2017年の話で、ちょうど私がDXFのプログラム開発・準備を進めている頃でした。

その日、実際の講演を拝見して「ぜひDXFでの講演をお願いしたい」と思いました。それが田所さんに相談しようと思った最初のきっかけですね。

━DXFとは具体的に、どのようなプログラムなのでしょうか?

本フォーラムは、DXに精通した次世代経営者の育成と、様々な産業・企業間のDXネットワーク構築が目的のプログラムです。受講の対象者は、今後10年以内にCXO就任が期待されている方々を想定しています。

カリキュラムは、一橋ICSの教授陣や海外提携校の講師陣、ゲストスピーカーや参加者間の直接対話を通じて、DXの課題解決スキルと実行力が養えるよう設計されています。第5期を迎える2022年度は10月〜12月にかけて、3つのモジュールと最終日のプレゼンテーションという組み合わせで開催しました。

講演テーマは「DXの本質」について

━過去5年、ユニコーンファーム田所への講演依頼を継続的にいただいております。どういった点を評価してくださっているのでしょうか?

田所さんは、スタートアップ起業や新規事業開発、DXに関する豊富な知識と事例をお持ちです。ご自身も起業を経験されているので話の内容にも説得力がある。そこが一番の魅力であり、我々が期待している点でもあります。

DXをテーマとして扱う場合、前提として「単なるデジタルの導入ではない」という点を押さえる必要があります。DXは一種のバズワードとしてDXが取り上げられることが増え、表面的な理解が世の中に広まってしまっているように感じています。

しかし実際に本気でDXに取り組むのであれば、「新たな顧客体験」の創出が目的であり、それを実現するための「企業改革」も必要不可欠となるはずです。そして、DXを実行する過程においては、社内外に仲間を増やして進めることが重要となるわけですが、そのためには、産業や地域、日本や世界の「社会変革」を目指すことで共感・共鳴してもらう必要があるでしょう。

そこで我々は、2022年のDXFでこれらを「DX = CX x EX x SX」をコンセプトにし、カリキュラムの開発とプログラムの実施を進めることにしました。

DXFでの学びを最大化するためには、参加者の皆さんに、このコンセプトの全体像を最初に落とし込んでもらう必要があります。田所さんにはスピーカーとして「DX = CX x EX x SX」のコンセプトについて、様々な分野における多岐にわたる事例や経験を通じて伝えていただく役割をお願いしました。

ですので、毎年、モジュール1の『グローバル・パースペクティブズ』でご登壇いただいています。

例えば「企業変革」と一口に言うのは簡単ですが、具体的には従来の縦割りの組織構造を見直し、新たな組織体制を作り上げる必要があるかもしれません。意思決定の方法や、毛kkあの評価設計なども、既存事業と新規事業では異なってくるでしょう。

周囲からは「DXを進めたら、結局何がどうなるのですか?」と、問いかけが続くかもしれません。それに対して我々は、日本の、世界のためになるということを伝え続けていく必要があります。DXとは地球規模や人類規模の変革につながる可能性をもつと考えています。

そしてこれらの文脈は、まさに田所さんが得意とする「大企業のオープンイノベーション」と重なるところが多分にあります。CX(顧客体験)、 EX(企業改革)、 SX(社会変革)がすべて絡んでくる。だからこそ田所さんにフォーラムの最初のモジュールで3日間、徹底的に話していただくことに価値があるわけです。

実際に受講生からのアンケートでも、田所さんの話を聞いたことでDXへの理解がさらに深まったという声が多く見られます。こうしたフィードバックがあるからこそ、我々も安心して田所さんに毎年お願いができるわけです。

DXFのこれまでの取り組みと今後について

━DXFの今後について、どのような構想を描かれていますか?

「DXFをDXする」というテーマで、さらなるアップデートを考えています。展望をわかりやすく説明するために、一度これまでのDXFの歴史を振り返ってもよろしいでしょうか。

まずDXFの運営がスタートしたのは2018年です。最初の2年は対面形式でフォーラムを開催。次の2年はパンデミックの渦中だったこともあり、100%オンラインの形式を取りました。そして2022年の今年は「ブレンド型」を採用し、新たな体験を参加者にご提供いたしました。

「ブレンド型」というのは、対面(リアル)と遠隔(オンライン)、同期と非同期をすべて混ぜた提供スタイルです。『Canvas』『Zoom』『Miro』『DxGROW』『GROW360』などを活用しました。

こちらは、実際にフォーラムで使用したデジタルツールによる記録です。

100%オンラインで提供したものを、今度は100%リアルに戻すのではなく、良い部分だけを抽出して「学習体験をさらに高めるにはどうすればよいか?」を考えました。

私が担当したセッションを例に出してみましょう。コロナ禍以前では、グループに分かれて議論をする際には、教室の四隅にグループごとに移動してもらい、それぞれにホワイトボードに記録を残す方法を取っていました。これがオンラインの場合はZoomでブレイクアウトルームを作成し、Miroのボード上にメンバーの発言を整理するやり方に変わります。

「ブレンド型」は、実際に教室で議論はするものの、記録はMiro上に残す方法をとりました。以前は記録をデジタルに残すために、わざわざホワイトボードに書かれた文字をスマホで撮影し、デジタル画像として保存するシーンも多くありました。「ブレンド型」になると、これらがMiroボード上でリアルタイムに表示・記録・保存さます。各グループの会話・様子が一目瞭然になるため、参加者にとっても役立つほか、我々講師陣もより効果的なファシリテーションができるようになります。

さらに2022年は「学びの未来」と「Web3」のサンドボックス体験と称して、いくつかの新しい試みを実施しました。

ブロックチェーン技術を使って学習履歴を参加者に帰属させ、修了証はオープンバッジ形式で発行する。また学習履歴に基づいてトークンを発行し、DAO上でそのトークンを使うと、例えばプログラミング言語を学ぶためのオプショナルセッションを履修することができる、といった具合です。DXFをサンドボックスとして活用し、Web3で利用可能となるテクノロジーやそれによって実現可能となる世界を実際に体験してもらいました。

今後も、DX提案の実行過程に関する、深い理解が得られるような機会を提供していく考えでおります。

推薦のメッセージ

━田所の講演はどのような方にお勧めでしょうか。最後にメッセージをお願いします。

田所さんは参加者の方々の関心事に合わせ、内容をカスタマイズして話されます。DXFでも、毎回、プレゼン資料を400スライドほど事前に用意してくださっていますが、セッション当日はそれらをすべて使うわけではなく、受講者の関心事やその場のやりとりを通じて柔軟に進めていただいています。

臨機応変に対応してくださるので、ある産業や企業、個人に限定することなく、誰にとっても役立つお話をしてくださると思います。田所さんの講演を、あえて誰か特定の人にお勧めするとしたら、意思決定をしてDXを進めていく立場にある人たちを候補に挙げたいですね。

田所さんの語る内容は、多岐にわたる産業や分野にまたがる、長年のご経験にもとづいており、ゆえに説得力がある。我々も今後、引き続き継続的な講演をお願いしたいと思っています。

 

TOP